08. 境界
私にはちょっとした境界がある。
それは恋すること、唯一人の人を思う感情のこと。
私は、そういう気持ちになってしまうのが怖いから。
そういう気持ちに対して嫌悪感を覚えるから。
人を好きになる事は沢山ある。
愛している人もいる。
誰よりもかけがえの無い人もいる。
ずっと忘れられない人もいる。
でも、それとこれとは違う話。
家族を思う気持ちとも
友達を思う気持ちとも
親しい人たちを思う気持ちとも違うんでしょう?
誰かを不幸にしても構わないと……
そんなことも思ってしまえるんでしょう?
私は私自身の生まれに疑問を持っている。
母は人間の魔導士。
父はエルフの旅人。
そもそも旅をしている時点で変わったエルフだけれど
その変わったエルフと母は恋に落ち
そして私が生まれた。
別に両親を恨んでいるとか
両親を憎んでいるとかそんな事は思っていない。
むしろ、こうして私を生んでくれた事に感謝している。
だけど、私は人とは違った。
同じ時の流れを刻む事が出来ない。
みな、私を置いてどんどん歳を重ねていく。
私だけ幼いまま、子供のまま。
良かったと思う事など一度も無くて
いつも違いに悩まされる。
私は人ではなくエルフでもない。
同じ時間を共に刻める人が居ない。
世界を探せば誰かいるのかもしれない。
同じ境遇の人。同じ事を思っている人。
だけど、理解しあえたところで何かが変わるとも思えない。
だから、あえて探さない。
私は私の愛する人たちがいる今の生活が好き。
無理に誰かを好きになる必要もきっと無い。
もし、そう思ってしまったとしても認めない。
そう、認めない。
認めたくない。
私はこの境界が越えられない。
超えたくない。
超えるのが怖いだけかもしれない。
これ以上傷つきたくないだけかもしれない。
あなたは私が強いとかしっかりしているとか言うけれど
私は多分、本当はあなたほど強くも無い。
精一杯、虚勢をはっているだけ。
精一杯、強がりを言っているだけ。
こんなことを考えるのはあなたのせいね。
あなたが現れたりするからいけないのよ。
あなたが私の禁忌に触れてくるからいけないの。
知っている。
本当は気がついている。
でも気がつかないふりをしているの。
あなたからの好意、痛いくらい伝わっているけれど
私はそれに応えられないの。
あなたもそれに気がついているんでしょう?
だから、あなたも素知らぬふりをする。
認めたくないこの気持ち。
だから私は分からないふりを続けるわ。
もしかしたら、余程そちらの方が傷つくのかもしれないけれど。
超えられない境界。
超えたくない境界。
私の気持ちはいつもずっと闇の底に沈んでいるの。
私はこの境界を超えられないから。
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関連リンク
ってことでバレンタインっぽいイラストの説明文、みたいな(笑)。
こちら覗く人は少なそうだからこっそり隠しておくのです(笑)。
ということでセレナさんです。
絵置き場の紹介で度々恋愛不審と書かれた人ですけども
こういう理由なんですね。
んで、気になる人が出来たんだけど、今度は認められないと。
結構、彼女はこの境界線はなかなか越えられないんじゃないかと思います。
だから自分が気になる人が自分を思ってくれているって気がついても
知らん顔してるくらいなのですよね。