22. ふたり


俺達は二人だった。
知ったのはつい最近だった。
ずっと一人だと思っていたのに二人だったんだ。


僕達は二人だった。
向こうは僕のことを知らないけれど
僕はずっと君の事を知っていたんだ。


お前が俺に求めようとするものは何なんだ?
俺達は多少の違いがあっても同じようなものじゃないか。
血だって繋がってはいなけれど、それ以上に同じじゃないか。


君には僕の気持ちは分からないさ。
僕が僕であるためには君が居ると困るんだよ。
あまりに似ているから嫌なんじゃないか。
ねえ、君は鏡を見たことがある?
鏡に映った自分を好き?
僕は……はっきり言って好きじゃない。


鏡像の自分だって自分だろう?
だけど、俺はお前の鏡像じゃない。
お前はお前、俺は俺だ。
俺の髪は茶色だし、お前の髪は銀色だ。
俺の目は緑だけれど、お前は赤い。


それは見た目の話だろう?
僕は氷の魔法が得意だ。君もそれは同じ。
僕は本を読むのが好きだ。そして君もそうだ。
僕は独りで居るのが好きだ。そして君もそれは同じ。
持つ力も才能も気持ち悪いくらい似ている。
同じ人間は二人も必要じゃない。


だけど、それでも俺とお前は違うじゃないか。
こうして話している時も、お前は違うことを言うじゃないか。
それは『同じ』ではないんじゃないのか?


僕達は二人だった。
だけど、君が居るから僕は僕じゃなくなった。
僕が僕であるためには……似ている奴なんていらない。
鏡像みたいな自分はいらない。


俺達は二人だった。
生きてきた道のりもよく似ていた。
だけど、俺はお前とは別だと思っている。
同じ『もの』だとは思っていない。
そう、俺達が同じ目的で作られたものであったとしても。


二人だった。
必要なものは一つだけ。
同じものはいらない。


俺達は二人だった。
二人がそれぞれ生きられるように
俺はその道を探していく。
俺達は別であると信じているから。


僕達は二人だった。
甘いよ。そんなに世間は甘くない。
作り出したものに寛容なんかじゃない。
僕は生き残る。もう一人の僕を犠牲にしても。





★戻る★



普通に痛い話でございます;;実はモデルになっているキャラが居ます。
作り出された人間が居て、実は彼らは二人だった。
で、『俺』の方が認められて『僕』の方が隔離されてたのですよ。
そんな話を書いてました(^^;)。
そのうちお披露目する予定のお話です。でも暗いようで暗くない話なんだな…(謎)。
別に予告編ではないんですがね。『ふたり』を見た時、一番に浮かんだのが彼らだったのです。