01. はじめまして

命ってどんなものなのか知らなかった
『生まれてくる』ってどんな事なのか分からなかった
だけど、皆、母の大きなお腹に赤ちゃんがいるのだと言った
日増しに大きくなっていくそのお腹に『赤ちゃん』がいる
それだけは理解できた

私には兄弟がいない
それまで家族はお父さんとお母さんと私だけだった
友達には弟がいた
だから兄弟がどんなものかは知っていた

妹が欲しかった
同じ女の子なら一緒に遊べると思ったから
妹が欲しかった
お姉ちゃんと呼んでもらいたかったから

生意気にも名前まで考えていた
女の子の名前しか考えなかった

でも『赤ちゃんが生まれる』ことは寂しい事だった
母が入院してしまったから
私は小さかったから病棟には入れなかった
母を呼んでくるからと、父や祖母が私の傍を離れる
小さい子の時間はゆっくり流れるから
大人だと少しの時間が何十分にも思えた
一人ぼっちになって取り残されるのが不安で
不安で不安で仕方が無くて
周りはみんな笑っていたけれど
私には大きな問題だったのだ

それでも父や祖母が傍にいたから
病院では寂しい思いはしても家ではそうでもなかった
いつかこの家に母と妹がやってくるのが待ち遠しかった

また、名前を考え始める
いい名前が良いなと思った
一生懸命考えて一つの名前がひらめいた
それ以上いい名前なんて思い浮かばなかった

名前が思い浮かんだ時、電話がかかった。
祖母が私に笑顔で声をかけた

『赤ちゃん、生まれたよ』

病院へと向かう
当然私は入れないし、会う事も出来ない
もう、この頃にはその事実は分かっていた
それでも、兄弟が出来た嬉しさは寂しい思いを超えていた

だけど、会えないと思っていた私に祖母が手招きをする
内緒で病棟に入り込んだ
赤ちゃんのいる部屋の窓は高くて見えない
祖母に抱き上げてもらった

中には何人も赤ちゃんが並んでいた
みんな大人しく眠っていた
誰が誰なのか分からない
私の兄弟は一体この中の誰だろう?

祖母に教えられて、その子を見た
小さな女の子が眠っていた

なんともいえない思いがした
これが『生まれてくる』ということ
これが『赤ちゃん』
そして私の『兄弟』

だから私は心の中で彼女に言った

「はじめまして 私がお姉ちゃんだよ」




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そんな訳で…私の経験で一番大きな「はじめまして」です。
妹が生まれてくるのって…よく分かっていなかったけれど嬉しかったのは確かです。
この時考えていた名前を父も考えていたとか、本当にその名前に決まったとか色々ありましたね。
父と一緒の発想だったから良かったんでしょう(笑)。
しかし、4歳の出来事ですが結構はっきり覚えているんですよね。
皆の話では雪が降っていたらしいんですが…天気は覚えて無いですけど(^^;)。
まあ、念願の『お姉ちゃん』は呼んでもらえなかったんですが(TT)。
なんにせよ、妹が生まれてきたのは大きかったです。
喧嘩もしますけど、大切な妹です。